透析施設開設までの道程⑧治療区画以外の設計

2013年3月21日木曜日

お仕事

今回もまたクドクドした長文です(汗)
①注射準備・調剤区画

透析医療における標準的な透析操作と
院内感染予防に関するマニュアル三訂版」では
「注射薬等を準備する場所は透析室から区別された区画とする」
としている

透析治療とは多人数を同一箇所で同時進行的に実施することと、
血液を大量に体外循環させるため
飛散などにより医療スタッフへの付着のリスクが高いことから、
治療区画での注射薬の吸引・混注などの作業は、
薬剤への感染源の混入などのリスクが増大するため推奨されない
(保健所の立入検査でも指摘事項となることがある)

当然のことながら、他の汚染区域とも区別され、
この区画の出入口には手洗洗面台を設置し、
作業前後で手洗いを行うことが求められる

同時にアンプルなどの小物薬剤の保管庫も兼ねるため、
温湿度管理やセキュリティを考慮した設備工事が必要となる
イメージ
…プレフィルドシリンジを活用出来れば不要な区画かもしれないけど
混注や溶解、吸引などの作業が必要な薬剤もまだまだありますからね…


②事務作業区画

透析治療中に患者の監視がしやすく、
患者の入退室を管理しやすい位置への配置が望まれる
通常は患者ベッドと透析室出入口との間に設置され、
柱などがなく見通しの良い区画を確保し、
作業しやすいよう広めのナーステーブルを設置し、
周囲には事務作業に必要な書類棚や
電話、FAX、パソコン(LAN)などが必要となる
個人情報保護やセキュリティの観点から、
カルテや記録類などの保管棚は鍵付きとすることが望ましい
どこの施設さんの画像か不明ですが勝手に拝借(汗)

…俗に言うナース(スタッフ)ステーションですが、
患者さんの監視のしやすさに託けて
スタッフの溜まり場になる傾向があるため
オレ的には事務机1個分のスペースを隅っこに作れば十分と考える
できるだけ患者さんの近くに行くようにしましょう!
ヾ(-_- )シゴトチュウノオシャベリハダメヨ!


③機械室

水処理装置など透析装置システム群の心臓部とも言える、
大型の装置を管理する区画

多人数用透析システムでは
水処理装置、粉末型透析溶剤の溶解装置、
調整透析液を各ベットサイド装置へ供給する供給装置などが設置される

開封した薬剤を溶解装置に投入する際に落下細菌が混入しないよう、
クリーンブースを設置するなど空気の清浄度を上げる工夫が必要となる

個人用透析システムの場合は水処理装置のみとなるため、
清浄度はさほど気にする必要はないが、
水処理装置は動作音が大きく、
過度の騒音と熱および湿気を発するため、
治療区画へ音や空気が漏れないようしっかり間仕切りを行い、
換気・空調設備を設置し温湿度管理を行う

また、器材庫と兼用する施設も多いため、
その際は後述する器材・薬剤庫の項を参照されたい

水処理装置は大量の原水(水道水など)を使用するため、
配管の不具合による漏水が起きた際は、
階下や近接区画に浸水被害が大きいため、
床面に防水処置を施し、室中心に向かって傾斜させた床排水か、
装置床面に防水パンを設置するなどの対応が必須となる
どこの施設さんの画像か不明ですが勝手に拝借(汗)
…清浄化を達成するためには、
配管廻りを含め、機械室の設計って重要ですよね
特に溶解装置は唯一密閉系でない箇所ですので
よ~く検討しましょう


④器材・薬剤庫

透析治療で使用される、
衛生材料および薬剤などを管理・保管する区画は
温湿度管理を徹底する

透析原液や人工腎臓(ダイアライザ)など梱包の大きい部材が多いことから
広いスペースが必要となる

また業者による搬入経路は治療区画を通らない動線となるよう設計し、
外部から搬入される器材には埃塵が付着しているため、
保管室側を陰圧とし、治療区画へ汚染空気を流出させないことが必要
業者さんの倉庫ですので
参考にならないかもです(汗)
…北海道では真冬は氷点下が当たり前
ウェットタイプのダイアライザを凍結させてしまっては
使い物にならなくなってしまうので
室温を維持できなくてはお話にならない
(実際に業者さんが配送の際に凍らせてしまった事例がある)
[[[;-_-#]]]カッチーン
薬剤も保管するため高温多湿は避けねばね(汗)


⑤洗浄・汚物処理区画

透析治療では体内より短時間で水分や代謝産物を除去するため、
急激な体調変化によりショックを起こし、
度々嘔吐する患者も珍しくない

また、ベッド上で拘束されているため、
便意があっても思うようにトイレに行けず、
ベッド上で排便を行う方も少なくない

それらの処理の際に汚染を広げないためにも
汚物処理槽は治療区画に近接し、
汚染物質や臭いが流出しないよう
隔離され換気設備が整った区画にあることが望ましい(陰圧室とする)
…過去に開設したいくつかの施設で初期設計の際に
必ずといっていいほどこの区画のレイアウトを忘れてしまい
開設後に苦労したことがあった Σ(゚ロ゚;)シマッタ!


⑥透析患者専用区画(ロビー・食堂・更衣室・トイレ)

透析開始までの待機および透析後の回復や食事を摂る区画で、
同日の患者全員が待機できる広さおよび椅子などを確保する

透析後に具合が悪くなった際には、
臥床できるスペース(小上がり・ソファーベッド)を確保することが望ましい

また、シャント穿刺箇所から不意に出血するなどの緊急事態に備え、
ナースコールの設置は必須

入室時は外履きで構わないが、
床面が濡れると転倒の危険があるため、
泥除けマットを設置するか、入口でスリッパへの履き替えを行う

治療区画への入室時は、毎回体重測定を行うため、
風袋を一定に保つ観点から、
毎回、同一のスリッパへの履き替えが好ましい

トイレは一般用と障害者用トイレの2箇所設置することが望ましいが、
2箇所設置が不可の場合は障害者用トイレの設置を優先する

院内感染対策の観点から、
入室時のシャント穿刺箇所の洗浄や
食事前の手洗いなどのために洗面台を設置する

更衣ロッカーは複数患者での共有化を避け個別ロッカーとし、
トイレおよび洗面台の職員との共有化は避ける
また、介護者や付き添いなどが待機できるスペースを別途設けることが望ましい
…あまりにも居心地が良すぎて
患者さんがなかなか帰ってくれないなんてこともありました(笑)
最近では足湯なんか作られた施設さんもあるようです w(゚o゚)wスバラシィ


⑦職員用区画

勤務スタッフ数が極少数に限られる場合、
透析中の緊急対応に備え、
治療区画と隣接した区画に休憩スペースやトイレを設けることが望ましい
(交代要員に余裕がある場合はこの限りではない)

いち早く異常を察知できるよう、
ナースコールの準親機や電話機などを設置する
院内感染対策の観点より、
患者用の区画・設備(更衣室、ロッカー、トイレ、洗面台など)の共有は避ける


…以前、勤めていた施設では、近くに休憩室がなくて、
埃っぽい機械室の隅っこで昼食摂っていたこともあったっけ...
|||ドヨ~ン(; =~=)ψイソイソ|||

⑧その他

同一区画で同時に多人数の治療(診療)を行うため、
個人情報が他患者へ筒抜けとなりやすい

医師の診療や説明、看護スタッフによる指導などは
個人情報保護の観点から別室で行うことが望ましい

担当医が透析専任の場合は、医師室・診察室を設けるが
スペースに余裕がなく患者数が少ない場合に限り、
指導・相談スペースと共に兼用としても良い


…透析外来と称して、透析後に外来診察室に寄ってもらって
診察・説明を行なっている施設もあるようです
次回は電気・給排水・医療ガスなどの設備編を予定
次からは少し短めに収まると思います(笑)