体位で変わる血液検査データ

2018年11月10日土曜日

お仕事

昔から言われていることで
ネタとしては今さら感いっぱいでスンマソン(汗)

皆さん、すでにご存知のことと思われるけど、
体位によって見かけ上、
ヘマトクリット(Ht)って変化するよね...

うちBV(ブラッドボリューム)計を
全台に装備してるんだけど、
透析中、臥床していた患者さんが、
いきなり座位になると
⊿BVが急激に低下するのをちょくちょく見かける
除水が殆ど無くても座位になったら下がる?(右)
電動ベッドを患者さん自ら
操作できるようにしてるんで、
皆さん、好き勝手に
寝たり(臥位)、座ったり(座位)...(苦笑)

そんでもって、
なぜか透析後半に示し合わせたように、
臥位から座位になる患者さんが多く、
急に⊿BV下限の警報設定値を超え
あちこちで警報鳴り出すもんだから、
焦っちゃうんだよね(汗)

⊿BVの低下=Htの上昇ってことなんだけど、
これってBV計だけの問題ではなく
座位前後で採血してみると
マジでHtが上昇しているんだよね...

理由は「人工透析二人会」さんのWebページに
このように書かれている

<体位>
ヘマトクリット(Ht)値は採血時の体位によっても変動します。
即ち、透析前の座位に比べ臥位後10分のヘマトクリット(Ht)値は平均2ポイントも低下し、また臥位後も30分以上ヘマトクリット(Ht)値が低下し続けることも知られています。
これは、臥床すると循環血液量が増加し、血液が希釈されるためと考えられています。


ちょっと古いけど、
日本透析医学会の2008年版
慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン
にも以下のように書かれていた

採血時の体位がHt値に影響することも知られている。わが国における検討でも健常人に比べHD患者の方が,仰臥位でより大きくHt値が低下することが報告されている。欧米の多くのHD患者はチェアーベッドによる座位透析であるのに対し、わが国のHD患者は一般に仰臥位透析であり、採血時の体位が異なる。そこで 4施設において残腎機能のほとんどない週3回HD患者99例を対象に入室直後の座位と仰臥位後約10分の採血で末梢血データを比較した。その結果、仰臥位採血のHt値は座位時の94.3%であった(レベル C)。
以上の 2 つの要因を単純に計算すると、欧米のHt値33〜36%はわが国の30.8〜33.6%に相当することが判明した。

他にも5%程差が出るという報告も...

実は体位で変化する検査データって
Htだけじゃないんだよね(苦笑)

医学検査 Vol.64 No.2 2015
臨床検査項目の生理的変動」より

採血時の体位の違いによって検査結果が変化することはよく知られている。
その機序は、仰臥位と比べ座位や立位では、血液が下肢にたまり、血管内の水および小分子成分が水圧をうけて血管外に漏出する。
このため、血管内の水分が減少し、血球・蛋白成分など血管壁を自由に通過できない成分の濃縮が起こるためである。
筆者らは、体位の変化と時間を厳密に制御し多項目にわたって臨床検査値の変動を解析した。
その結果、30分間隔の体位変化で仰臥位に比べて座位が平均5.7%高値を示し、さらに立位で平均10.3%高値を示した。
この現象は大分子成分であるTP、Alb、ChE、LD、HDL-Cなどのほとんど全てで認められ(Figure 5)、また大分子でなくとも、血中の蛋白と結合して存在する物質(Fe、TCho、TG)でも、同様の体位変動を認めた。
これに対してNa、Cl、Mg、UA、UNなどの小分子成分は体位の影響を認めなかった。
特異的な変動を示す項目として、CREは逆に仰臥位より座位や立位で低下傾向が認められた。
これは、体位により、腎血流が変化したためと考えられる。
また、体位の実験で注目されるのは、IPとWBCの歩行後の変化である。
IPについては歩行時のみ上昇するが、これは歩行による筋肉労作によりエネルギー源としてのATPの消費が増えたためである。
同様に、WBCは仰臥位に対して歩行直後で平均 28%上昇、最大でも58%上昇しており、運動によるコルチゾールの分泌などが関係していると考えられる(Figure 6)。
従って、これらの項目では、外来患者が予約時間に間に合うよう急いで来院した場合など、非安静下で採血すると、誤診につながるので注意を要する。

透析前後の血液検査の時は
同じ体位で採血しないと
検査データが比較できない事も
重々考えておかないとね

あと、BV計の⊿BVが急激に下がったからって、
いちいちビビらないで、、
冷静に体位変化などを確認するようにしないとね(苦笑)