電波管理は難しい?

2018年8月29日水曜日

お仕事 時事ネタ

病院を悩ませる「電波」の問題 迫られる「電波管理」の難しさ
東洋経済オンラインより

スマホだけじゃない、病院を悩ませる「電波」
正常時の医用テレメーター(左)と、発信器を遠ざけた際の反応(右)。表示された心電図に乱れが生じている(記者撮影)
「この機器で患者さんの心電図をモニタリングしています」

埼玉県日高市、県内有数の医療機関である埼玉医科大学国際医療センターの一室。目の前に置かれたの医療用テレメーターに心電図が映し出されている。患者に小型の発信器を装着させると、心拍数などの生体情報を遠隔で観察できる医療機器だ。

「画面を見ていてください」

発信器を持った病院スタッフが部屋を出て、そのまま廊下を歩き続ける。扉を開けて別のフロアに移った瞬間、画面に映し出されていた心電図が乱れ始め、ついにぴたりと止まった。発信器からの電波が途切れたのだ。

こうした不具合は院内の実際の医療現場でも起きており、「看護師からたびたび報告を受ける」と、同センターで医療機器の保守点検を行うMEサービス部の松田真太郎氏は話す。

通信機器の「制限」から「活用」へ
一億総ケータイ時代。全国で基地局の建設が進み、都市部ではフリーWi-Fiが利用できる場所もぐんと増えた。そんな電波環境の発達した社会から、取り残されたのが病院だ。

携帯電話の技術革新により、病院をとりまく環境は大きく変わった。第2世代(2G)の携帯電話に代わり、電波の出力が弱い第3世代(3G)や第4世代(4G)が普及し、医療機器への影響が軽減された。

その結果、電波行政を管轄する総務省が2013年に公表した指針においても、病院のロビーや病棟での携帯電話の使用は基本的に問題はなく、診療室内でさえ影響は限定的としている。今や携帯電話の使用を全面的に禁止している病院は、古い指針を採用している小さな診療所や、通話マナーの側面から電源オフを要請している病院などに限られつつある。

むしろ最近は、病院から電波を排除するよりも、活用することに焦点が移っている。冒頭の医療用テレメーターに加えて電子カルテ、さらには無線で送信するレントゲン写真など、通信機能を搭載した医療機器は日増しに増えている。日常的に無線LANが飛び交う病院ロビーも珍しくなくなり、病院内での通信機器の存在感は高まっている。

問題は、医療機器への影響よりも、むしろ病院側の電波環境が追いついていないことだ。

病院内での医療機器の安全管理に詳しい埼玉医科大学保健医療学部の加納隆・客員教授は、「電波管理をしたくても、スタッフもノウハウも足りない」と、医療現場の現状を指摘する。

ひとくちに「電波」と言っても、病院では携帯電話の電波は施設課、医療機器の発する電波は臨床工学部門と分かれており、さらに患者自身が使う携帯電話や無線LANなど相互にどんな影響を与えているかを一元的に管理することが難しい。
こうした縦横無尽に飛び回る電波を放置すれば、電波が医療機器に干渉して誤作動を招いたり、電波が繋がらず医療機器が作動しなくなるおそれがある。現場では医療用テレメーターの不調により、場所を変えて何度も接続を試す事態がすでに起きているという。

スタッフ3人で1週間つきっきり
総務省は、病院内に電波が届かない場所がないか年1回点検することを推奨している。だが「発信器を持ったスタッフが病室をくまなく回り、電波がきちんと受信できるかをしらみ潰しに確認する」(臨床工学技士の資格を持つ埼玉医大の川邉学講師)という、想像以上に原始的かつ疲弊する作業が待っている。

国際医療センターの場合、100以上の病室に加えて、トイレや廊下なども測定する必要がある。「昨年に行った調査では、スタッフ3人が1週間つきっきりで測定して回った」(国際医療センターの松田氏)。毎年点検業務を行えるほどの時間や人員もなければ、医療機器の保守点検を行う臨床工学技士も足りていないのだ。

繋がりにくい場所が見つかっても、対応は一筋縄ではいかない。たまたま他の通信機器と干渉していたならまだしも、送信機から発せられた電波を増幅して部屋の隅々まで行き渡らせる天井裏のアンテナ線が問題なら事態は深刻だ。

部屋の隅などアンテナ線からの距離が遠い場所や、アンテナ線自体の老朽化が原因の場合は工事が必要になるが、設備の隙間を縫うように張り巡らされたアンテナ線を引き直すことは専門の業者でも手を焼くという。

追い打ちをかけるのが、2020年にPHSのサービス終了が決まったことだ。電波が微弱で医療機器に影響を与えづらいPHSは病院で広く使われてきた。今後は病院スタッフによるスマートフォンの操作も想定される中、電波環境の整備が喫緊の課題として浮上した。

病院を悩ませる「電波」に処方箋を出そうと挑む企業がある。それは携帯電話会社でも、医療機器メーカーでもない。ゼネコンだ。大成建設は6月、病院内での電波環境を「見える化」する技術を開発した。

同社のシステムでは、建物の設計図や配線図現地調査に基づき電波の動きをシミュレーションし、繋がりやすさを青、黄、赤の順で表示する。実際に埼玉医科大学国際医療センターの病棟で行った実験では、一部の病室が黄色に、扉で仕切られた空間であるトイレの中が赤く表示された。

発信器を持って全病室を回るという骨の折れる点検作業をせずとも問題の場所が一目でわかるようになる。
見える化システムのシミュレーション画面。 一部の病室で 電波が繋がりにくい結果が出た(左)ため、受信アンテナや扉の位置を変えることで解決した(右)(画像:大成建設)
なぜゼネコンなのか。システムを開発した、大成建設の先進技術開発部 IoT推進室の遠藤哲夫氏によれば、「電波の繋がりやすさは、建物の構造に起因する場合も多い」からだ。冒頭の医療用テレメーターの不具合は、スタッフが防火用の鉄扉を越えた瞬間に起きた。金属製部材は電波を通しにくいのだ。

点検によって不具合が起きても、他の通信機器が干渉しているのか、建物の構造や部材が電波を阻んでいるのかは、病院スタッフでは判断がつきにくい。そこにゼネコンが参入する余地があった。

また、「建物の設計段階から電波環境の整備を提案していく」(遠藤氏)という意義もある。設計段階では電気や空調設備の配線は考慮されても、アンテナ線などの電波環境については後回しになりがちで、既に敷かれたダクトや他の配線の隙間に潜り込ませる必要がある。

そのため電波が通じる場所よりも、とりあえず空いている空間に敷く羽目になっていた。結局、建物の竣工後に不具合が表面化する。

電波環境の整備が大きな課題に
建物や設備の配置の設計する際に、電波の繋がりやすさもあらかじめ計画しておけば、こうした問題はなくなる。将来的には「病院内の電波状況を常時モニタリングし、(黄や赤の表示が出て)電波の不具合がすぐに見つかるようにしたい」(遠藤氏)という。

IoTという言葉の普及に象徴されるように、もはや通信機器は携帯電話を超えて、あらゆる機器に搭載しうる時代になった。国際医療センターには医療用テレメーターだけで約350台、医療機器すべてを含めると約4000台もあるといい、電波を発する機器は今度加速度的に増える可能性もある。

病院は「事故が起こってからでは手遅れ」(加納氏)な空間だ。機器ばかりが進化しても、それを受け入れる施設自体が不具合を起こさない構造でなければ平仄(ひょうそく)は合わない。医療が高度化する中で、電波環境という新たなインフラ整備の必要性を、病院は突きつけられている。

臨床工学技士が取り上げられた記事でした

電波の見える化システム、イイネ(笑)

一昔前、近隣の病院同士で
医用テレメータの電波が混信する事例が発生してたけど、
最近は、院内の電波に目を向けねばね

電波とひとくくりなように言ってるけど、
実際は多種多様あるからね
院内にもいろんな電波が飛び交っているけど、
最近、一般的によく使われるようになった
Wi-FiやBluetoothにも目を向ける必要がある

2.4Ghz帯の電波を利用するWi-Fi規格は802.11b・g)・n
この周波数帯って、
電子レンジやコードレスホンに影響を及ぼすらしいからね(汗)

ちなみにBluetoothも2.4GHz帯
医療現場で利用されるBluetoothには
マウスなどのPCの付属品や
コードレスのバーコードリーダーなどがあるよね(苦笑)

他にもワイヤレスカード(非接触ICカード)
RFID機器(電子タグの読み取り機)なども
影響が懸念されている

総務省「各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器等へ及ぼす影響を防止するための指針」で、
電波の影響を受けやすい医療機器として...
1)植込み型心臓ペースメーカー
2)植込み型除細動器
3)脳深部刺激装置
4)脊髄刺激装置
5)仙骨神経刺激装置
6)迷走神経刺激装置
7)植込み型輸液ポンプ
8)植込み型心電用データレコーダー
9)補助人工心臓駆動装置
10)ポータブルインスリン用輸液ポンプ
11)携帯型輸液ポンプ
...が挙げられてるけど、
他にもありそうだね
EMC規格適合品かも含め確認しておく必要があると思われる(苦笑)

電波管理って、大変そうだね(汗)

これからの医療機器管理は
情報セキュリティと電波に目を向けねばね(苦笑)