呼吸療法業務から離れて久しいんだけど、
こんな記事が掲載されていたので、
お勉強のつもりで転載
トレンド◎高度な呼吸管理とQOLの維持を両立
呼吸管理の“空白”を埋めるハイフローセラピー
日経メディカルオンラインより
従来の酸素療法では治療効果が不十分。
しかし、次の治療ステップである非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)は患者に拒否されてしまう――。
現場の呼吸管理でしばしば遭遇するこんな困ったケースに対応できる新しい手段として、ここ数年で急速に広がっているのがハイフローセラピーだ。
従来の酸素療法と比較して高精度な呼吸管理が行える上、飲食やコミュニケーションが可能でQOLが維持できる。
呼吸管理における位置づけはまだ定まっていないが、恩恵を受ける患者は増えている。
間質性肺炎で在宅酸素療法を行っていた高齢女性がある日、間質性肺炎の進行により呼吸不全を起こし入院した。
以前から挿管による人工呼吸管理は希望していなかった。
まずは酸素マスクによる酸素療法を行ったものの呼吸状態は改善せず、非侵襲的陽圧換気療法(NPPV:non-invasive positive pressure ventilation)による呼吸管理を実施。
しかし患者は、しばらくたつとマスクの圧迫感などに苦痛を感じ、装着を拒否するようになった。
こうしたケースでは、従来は鎮痛薬や鎮静薬を使用した上でNPPVによる管理を続けるか、NPPVによる管理をあきらめてオピオイド投与などによる緩和ケアを行うしかなかった。
だが数年前から、高流量で高濃度の酸素を鼻カヌラで投与できるハイフローセラピーが新たに治療の選択肢として加わり、従来の酸素療法のQOLを維持したままよりレベルの高い呼吸管理を行えるようになった。
「呼吸療法の域を超えた『簡便な人工呼吸』ともいえる高度な治療だが、患者の負担は小さく受け入れられやすい。様々な臨床の場面で使いやすい」。
気道分泌物が多い患者に最適
ハイフローセラピーとは、高流量(30~60L/分)で高濃度(21~100%)の酸素を鼻カヌラから投与できる新しい原理の呼吸管理方法のこと。
吸入酸素濃度(FiO2)は21~100%の間で正確に設定でき、呼気終末陽圧(PEEP)を軽くかけられるなど、従来の酸素療法よりも高精度な呼吸管理が期待できる。
一方で、挿管やNPPVと比較して患者のQOLは圧倒的に高く維持できる。
飲食やコミュニケーションも可能で、治療中の不快感も少ない。
2011年ごろから国内で導入が始まり、ここ数年、ICUや救急外来などの現場を中心に使用が増えている。
2016年の診療報酬改定では、急性呼吸不全に対する治療法として1日につき160点の加算が算定できるようになった。
ハイフローセラピーの特徴は他にもある。
通常、鼻腔から上気道にはCO2を多く含んだ呼気ガスが貯留する死腔が存在するが、ハイフローセラピーでは高流量の酸素を投与し続けることで、鼻咽頭に貯留した呼気ガスを外に排出する。
上気道も酸素の豊富なガスで満たすことで1回肺胞換気量を増やすことができるため、呼吸効率が上がり、酸素化を改善する。
また、加温加湿器によって十分に加湿した酸素ガスが供給できるため、高流量、高濃度の酸素であっても、鼻腔粘膜の乾燥に伴う疼痛や障害を極力回避できる。
加湿することで気道粘膜の線毛機能を高めて痰を出しやすくする効果もあるため、肺炎による呼吸不全や手術後など、気道分泌物が多い患者にはより適している。
酸素療法とNPPVの隙間を埋める
従来の呼吸管理の選択肢としては、呼吸不全の重症度に応じて、鼻カヌラやマスクによる低流量酸素療法、ベンチュリーマスクなどによる高流量酸素療法、NPPV、挿管による人工呼吸管理などがある。
だが、酸素療法では呼吸状態が十分に改善できないものの、NPPVによる管理が困難だったり適応外のケースでは最適な手段がなく、現場の試行錯誤が続いていた。
またNPPVは陽圧をかけて酸素を送り込むため、「大量の気道分泌物がある」「咳反射や嚥下反射の機能が落ちて排痰が難しい」といった場合は適応外。
2015年に改訂されたNPPVガイドライン(日本呼吸器学会作成)でも「適応注意または禁忌」とされている。
ハイフローセラピーは、従来の酸素療法とNPPVの間にあった“治療の空白地帯”を埋める方法として、使用が広がっている。
酸素マスクや鼻カヌラによる低流量酸素療法は、設定できるのは酸素流量のみ。
その流量は少ない上、患者が周囲の外気を一緒に吸いこむためFiO2を一定にできない。
べンチュリーマスクなどを使用した高流量の酸素療法もあるが、こちらも供給できるFiO2の上限は約50%と低く、加温加湿機能もないため苦痛が強いこともある。
酸素療法で呼吸状態を改善できない呼吸不全の場合、次の選択肢は主にNPPVだった。
NPPVは気管挿管や気管切開をせず、マスクの装着だけで一定の陽圧をかけて設定量の空気を肺に送り込むことができる。
しかし、マスクの圧迫感などから患者が苦痛を訴えて長期間の継続が厳しい場合もある。
特に、認知症や不穏などで体動が大きい患者の場合、マスクの装着自体が難しく、NPPVの実施には鎮静が必要になることも少なくない。
またNPPVは陽圧をかけて酸素を送り込むため、「大量の気道分泌物がある」「咳反射や嚥下反射の機能が落ちて排痰が難しい」といった場合は適応外。
2015年に改訂されたNPPVガイドライン(日本呼吸器学会作成)でも「適応注意または禁忌」とされている。
ハイフローセラピーは、従来の酸素療法とNPPVの間にあった“治療の空白地帯”を埋める方法として、使用が広がっている。
ハイフローセラピーによる管理でせん妄が減少
では、具体的にどんなケースでハイフローセラピーが使用されているのか。
現時点では、ハイフローセラピーの適応は明確になっていないが、国内外のこれまでの報告から、特に高二酸化炭素血症を伴わないI型の急性呼吸不全への効果が期待されている。
2015年には、高二酸化炭素血症のない急性呼吸不全の患者310人において、ハイフローセラピーは、NPPV、マスクによる酸素療法と比較して予後を改善するという海外の多施設共同試験の報告(FLORALI 試験)もあった。
一方で、ハイフローセラピーは人工呼吸器やNPPVのように換気補助ができないため、高二酸化炭素血症を伴う重度のII型呼吸不全には適さないと考えられている。
2015年1~3月に全国22施設で行われた「ハイフローセラピーの使用実態に関する多施設共同研究」では、332人(平均年齢76歳)の使用例の内訳は、間質性肺炎(22%)、細菌性肺炎(14%)、心原性肺水腫(14%)、胸部術後(10%)。他にも、様々な疾患による呼吸不全に対して使用されていた。
神戸市立医療センター中央市民病院でも、間質性肺炎の急性増悪に対する治療では、以前は人工呼吸管理が必要な状態ではまずNPPVを行う方針だった。
ハイフローセラピーを導入した2012年からは、患者がNPPVを拒否した場合や、NPPVからの離脱時にはハイフローセラピーを用いるという選択肢が加わった。
ハイフローセラピー導入前後で比べると、せん妄の発症や鎮静薬の使用、24時間以上経口摂取を中断したケースは導入後で有意に少なかった。
「NPPVによる管理が長期化すると苦痛を訴えるケースも少なくなかったが、ハイフローセラピーに切り替えることで不快感が減ってQOLも改善し、長期的に呼吸管理を継続できるケースが増えた」という。
ハイフローセラピーは、高齢者などで人工呼吸器による積極的な治療を拒否している患者には特に有用だ。終末期治療の現場におけるニーズも高い。
聖路加国際病院(東京都中央区)では、間質性肺炎などの呼吸器疾患で症状が進行してきた患者・家族に対して、呼吸状態が悪化した際にどこまでの呼吸管理を希望するかの方針を確認している。
以前は挿管など積極的な治療を希望しない場合はNPPVまでを希望するケースが多かったが、ハイフローセラピーが選択肢に加わってからは、『NPPVは行わずハイフローセラピーまで』と希望するケースが増えている。
同院では救急外来やICUなどの現場に限らず、一般病棟や緩和ケア病棟でもハイフローセラピーが呼吸管理の選択肢として定着している。
特に挿管やNPPVによる管理を拒否した患者や終末期などの場面に使用することが多い。
ハイフローセラピーの引っ張りすぎに要注意
もっとも、ハイフローセラピーの評価はこれからという段階。専門医らは、ハイフローセラピーを過信しないよう、警鐘も鳴らしている。特に重要なのは、NPPVや挿管に切り替えるタイミングを逃さないようにすることだ。
「ハイフローセラピーで引っ張りすぎて挿管のタイミングが遅れると予後が悪化するリスクもある。挿管などさらに上の治療までを希望している場合には、早めに判断すべき」と指摘する。
現在、ハイフローセラピーには数種類の専用機器が発売されているが、いずれも呼吸状態をモニタリングする機能やアラームは付属していないため、定期的に呼吸数、脈拍、経皮的酸素飽和度などのバイタルサイン、呼吸様式、自覚症状などで呼吸状態を評価することが欠かせない。
ハイフローセラピーからNPPVや挿管に移行するタイミングを明示した指針はない。
聖路加国際病院では、ハイフローセラピーでFiO2を70%程度まで上げても酸素化が保てない場合は早めに次の治療にステップアップしているという。
特に一般病床の場合は血中酸素濃度(PaO2)をすぐには測定できないため、バイタルサインや呼吸様式、自覚症状などから総合的に判断。
ハイフローセラピーを開始してから数時間の間に何度も確認し、呼吸状態が改善しない場合には1~2日以内には次のステップに切り替えている。
一方で、ハイフローセラピーを上限としての呼吸管理を希望しているケースでは、呼吸状態が改善するまでFiO2を上げて対応している。
患者がNPPVを拒んだ一例
80歳代女性。間質性肺炎にて当院呼吸器科通院中
大動脈弁狭窄症に対して弁置換術の既往あり。外来では在宅酸素療法(労作時O2 2L/分、鼻カヌラ)で経過しており、以前から挿管しての人工呼吸管理は希望していなかった。
ある日、間質性肺炎の進行による呼吸不全のために入院。入院時の胸部単純X線写真では、両肺にびまん性に網状影を認め、含気も低下していた。
SpO2 90%台前半を保てるように、酸素マスクで酸素流量を4L/分まで増加したところ、酸素化は改善したがCO2貯留も認めたため、NPPV装着となった。
NPPVによる治療開始後、呼吸状態が改善したので、食事時のみハイフローセラピーとし、NPPVと併用する方針となった。
その後、日中のハイフローの時間を延長したところ、マスクの圧迫感が強いことなどを理由に「NPPVの装着を今後は希望しない」という申し入れが本人からあった。
ハイフローセラピーを呼吸管理の上限として経過観察。
呼吸不全は緩徐に進行し、ハイフローセラピーのFiO2の設定も上昇傾向ではあるが、呼吸管理に対する苦痛の訴えは少なくなった。
数カ月経過しても、会話も経口摂取もできている。
前職でネーザルハイフローを借りて、
NPPVが上手く行かない患者さんに使ったことあったけど、
しばらく、人工呼吸療法業務から離れている間に、
結構、確立されてたんだねぇ
しかも、診療報酬で加算が付くまでなってたんだねぇ...
浦島太郎状態(汗)
でも、適応が明確でないというのも、残念な気が...
音はウルサイけど、複雑な操作が不要で使いやすくて、
看護師さん方も拒否反応を示さなかったシロモノで、
こちらとしても勧めやすかったっけな...
マスク(鼻カニュラ)やベンチュリマスクでの酸素吸入か、
挿管での人工呼吸器しかなかった時代に比べたら、
呼吸管理の幅が、随分と広がってきた印象
モニタリング機器の併用は欠かせないので、
どうせならIPPVやNPPVなんかとともに、
全てが一体になった装置って作れないものかね?
仕組み的には難しくないような気がするけど、
複雑になりすぎて、作るの大変なのかね?
それともお金がかかりすぎるから?
日本の医工連携の力を見せておくれ(笑)
こんな記事が掲載されていたので、
お勉強のつもりで転載
トレンド◎高度な呼吸管理とQOLの維持を両立
呼吸管理の“空白”を埋めるハイフローセラピー
日経メディカルオンラインより
従来の酸素療法では治療効果が不十分。
しかし、次の治療ステップである非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)は患者に拒否されてしまう――。
現場の呼吸管理でしばしば遭遇するこんな困ったケースに対応できる新しい手段として、ここ数年で急速に広がっているのがハイフローセラピーだ。
従来の酸素療法と比較して高精度な呼吸管理が行える上、飲食やコミュニケーションが可能でQOLが維持できる。
呼吸管理における位置づけはまだ定まっていないが、恩恵を受ける患者は増えている。
ハイフローセラピー治療中のイメージ(富井氏による) 専用の鼻カヌラから高流量・高濃度の酸素を供給。治療中に飲食もできる。 |
間質性肺炎で在宅酸素療法を行っていた高齢女性がある日、間質性肺炎の進行により呼吸不全を起こし入院した。
以前から挿管による人工呼吸管理は希望していなかった。
まずは酸素マスクによる酸素療法を行ったものの呼吸状態は改善せず、非侵襲的陽圧換気療法(NPPV:non-invasive positive pressure ventilation)による呼吸管理を実施。
しかし患者は、しばらくたつとマスクの圧迫感などに苦痛を感じ、装着を拒否するようになった。
こうしたケースでは、従来は鎮痛薬や鎮静薬を使用した上でNPPVによる管理を続けるか、NPPVによる管理をあきらめてオピオイド投与などによる緩和ケアを行うしかなかった。
だが数年前から、高流量で高濃度の酸素を鼻カヌラで投与できるハイフローセラピーが新たに治療の選択肢として加わり、従来の酸素療法のQOLを維持したままよりレベルの高い呼吸管理を行えるようになった。
「呼吸療法の域を超えた『簡便な人工呼吸』ともいえる高度な治療だが、患者の負担は小さく受け入れられやすい。様々な臨床の場面で使いやすい」。
気道分泌物が多い患者に最適
ハイフローセラピーとは、高流量(30~60L/分)で高濃度(21~100%)の酸素を鼻カヌラから投与できる新しい原理の呼吸管理方法のこと。
吸入酸素濃度(FiO2)は21~100%の間で正確に設定でき、呼気終末陽圧(PEEP)を軽くかけられるなど、従来の酸素療法よりも高精度な呼吸管理が期待できる。
一方で、挿管やNPPVと比較して患者のQOLは圧倒的に高く維持できる。
飲食やコミュニケーションも可能で、治療中の不快感も少ない。
2011年ごろから国内で導入が始まり、ここ数年、ICUや救急外来などの現場を中心に使用が増えている。
2016年の診療報酬改定では、急性呼吸不全に対する治療法として1日につき160点の加算が算定できるようになった。
ハイフローセラピーの特徴は他にもある。
通常、鼻腔から上気道にはCO2を多く含んだ呼気ガスが貯留する死腔が存在するが、ハイフローセラピーでは高流量の酸素を投与し続けることで、鼻咽頭に貯留した呼気ガスを外に排出する。
上気道も酸素の豊富なガスで満たすことで1回肺胞換気量を増やすことができるため、呼吸効率が上がり、酸素化を改善する。
また、加温加湿器によって十分に加湿した酸素ガスが供給できるため、高流量、高濃度の酸素であっても、鼻腔粘膜の乾燥に伴う疼痛や障害を極力回避できる。
加湿することで気道粘膜の線毛機能を高めて痰を出しやすくする効果もあるため、肺炎による呼吸不全や手術後など、気道分泌物が多い患者にはより適している。
I型呼吸不全に対するハイフローセラピーの特徴(NPPVとの比較) |
従来の呼吸管理の選択肢としては、呼吸不全の重症度に応じて、鼻カヌラやマスクによる低流量酸素療法、ベンチュリーマスクなどによる高流量酸素療法、NPPV、挿管による人工呼吸管理などがある。
だが、酸素療法では呼吸状態が十分に改善できないものの、NPPVによる管理が困難だったり適応外のケースでは最適な手段がなく、現場の試行錯誤が続いていた。
またNPPVは陽圧をかけて酸素を送り込むため、「大量の気道分泌物がある」「咳反射や嚥下反射の機能が落ちて排痰が難しい」といった場合は適応外。
2015年に改訂されたNPPVガイドライン(日本呼吸器学会作成)でも「適応注意または禁忌」とされている。
ハイフローセラピーは、従来の酸素療法とNPPVの間にあった“治療の空白地帯”を埋める方法として、使用が広がっている。
重症度からみた一般的な呼吸管理方法とハイフローセラピーの位置づけ (出典:『ハイフローセラピー実践マニュアル』〔ライフサイエンス社、2014年〕) ハイフローセラピーは既存の酸素療法とNPPVの間に位置づけられている。 |
その流量は少ない上、患者が周囲の外気を一緒に吸いこむためFiO2を一定にできない。
べンチュリーマスクなどを使用した高流量の酸素療法もあるが、こちらも供給できるFiO2の上限は約50%と低く、加温加湿機能もないため苦痛が強いこともある。
酸素療法で呼吸状態を改善できない呼吸不全の場合、次の選択肢は主にNPPVだった。
NPPVは気管挿管や気管切開をせず、マスクの装着だけで一定の陽圧をかけて設定量の空気を肺に送り込むことができる。
しかし、マスクの圧迫感などから患者が苦痛を訴えて長期間の継続が厳しい場合もある。
特に、認知症や不穏などで体動が大きい患者の場合、マスクの装着自体が難しく、NPPVの実施には鎮静が必要になることも少なくない。
またNPPVは陽圧をかけて酸素を送り込むため、「大量の気道分泌物がある」「咳反射や嚥下反射の機能が落ちて排痰が難しい」といった場合は適応外。
2015年に改訂されたNPPVガイドライン(日本呼吸器学会作成)でも「適応注意または禁忌」とされている。
ハイフローセラピーは、従来の酸素療法とNPPVの間にあった“治療の空白地帯”を埋める方法として、使用が広がっている。
ハイフローセラピーによる管理でせん妄が減少
では、具体的にどんなケースでハイフローセラピーが使用されているのか。
現時点では、ハイフローセラピーの適応は明確になっていないが、国内外のこれまでの報告から、特に高二酸化炭素血症を伴わないI型の急性呼吸不全への効果が期待されている。
2015年には、高二酸化炭素血症のない急性呼吸不全の患者310人において、ハイフローセラピーは、NPPV、マスクによる酸素療法と比較して予後を改善するという海外の多施設共同試験の報告(FLORALI 試験)もあった。
一方で、ハイフローセラピーは人工呼吸器やNPPVのように換気補助ができないため、高二酸化炭素血症を伴う重度のII型呼吸不全には適さないと考えられている。
2015年1~3月に全国22施設で行われた「ハイフローセラピーの使用実態に関する多施設共同研究」では、332人(平均年齢76歳)の使用例の内訳は、間質性肺炎(22%)、細菌性肺炎(14%)、心原性肺水腫(14%)、胸部術後(10%)。他にも、様々な疾患による呼吸不全に対して使用されていた。
神戸市立医療センター中央市民病院でも、間質性肺炎の急性増悪に対する治療では、以前は人工呼吸管理が必要な状態ではまずNPPVを行う方針だった。
ハイフローセラピーを導入した2012年からは、患者がNPPVを拒否した場合や、NPPVからの離脱時にはハイフローセラピーを用いるという選択肢が加わった。
ハイフローセラピー導入前後で比べると、せん妄の発症や鎮静薬の使用、24時間以上経口摂取を中断したケースは導入後で有意に少なかった。
「NPPVによる管理が長期化すると苦痛を訴えるケースも少なくなかったが、ハイフローセラピーに切り替えることで不快感が減ってQOLも改善し、長期的に呼吸管理を継続できるケースが増えた」という。
ハイフローセラピーは、高齢者などで人工呼吸器による積極的な治療を拒否している患者には特に有用だ。終末期治療の現場におけるニーズも高い。
聖路加国際病院(東京都中央区)では、間質性肺炎などの呼吸器疾患で症状が進行してきた患者・家族に対して、呼吸状態が悪化した際にどこまでの呼吸管理を希望するかの方針を確認している。
以前は挿管など積極的な治療を希望しない場合はNPPVまでを希望するケースが多かったが、ハイフローセラピーが選択肢に加わってからは、『NPPVは行わずハイフローセラピーまで』と希望するケースが増えている。
同院では救急外来やICUなどの現場に限らず、一般病棟や緩和ケア病棟でもハイフローセラピーが呼吸管理の選択肢として定着している。
特に挿管やNPPVによる管理を拒否した患者や終末期などの場面に使用することが多い。
ハイフローセラピーの引っ張りすぎに要注意
もっとも、ハイフローセラピーの評価はこれからという段階。専門医らは、ハイフローセラピーを過信しないよう、警鐘も鳴らしている。特に重要なのは、NPPVや挿管に切り替えるタイミングを逃さないようにすることだ。
「ハイフローセラピーで引っ張りすぎて挿管のタイミングが遅れると予後が悪化するリスクもある。挿管などさらに上の治療までを希望している場合には、早めに判断すべき」と指摘する。
現在、ハイフローセラピーには数種類の専用機器が発売されているが、いずれも呼吸状態をモニタリングする機能やアラームは付属していないため、定期的に呼吸数、脈拍、経皮的酸素飽和度などのバイタルサイン、呼吸様式、自覚症状などで呼吸状態を評価することが欠かせない。
ハイフローセラピーからNPPVや挿管に移行するタイミングを明示した指針はない。
聖路加国際病院では、ハイフローセラピーでFiO2を70%程度まで上げても酸素化が保てない場合は早めに次の治療にステップアップしているという。
特に一般病床の場合は血中酸素濃度(PaO2)をすぐには測定できないため、バイタルサインや呼吸様式、自覚症状などから総合的に判断。
ハイフローセラピーを開始してから数時間の間に何度も確認し、呼吸状態が改善しない場合には1~2日以内には次のステップに切り替えている。
一方で、ハイフローセラピーを上限としての呼吸管理を希望しているケースでは、呼吸状態が改善するまでFiO2を上げて対応している。
患者がNPPVを拒んだ一例
80歳代女性。間質性肺炎にて当院呼吸器科通院中
大動脈弁狭窄症に対して弁置換術の既往あり。外来では在宅酸素療法(労作時O2 2L/分、鼻カヌラ)で経過しており、以前から挿管しての人工呼吸管理は希望していなかった。
ある日、間質性肺炎の進行による呼吸不全のために入院。入院時の胸部単純X線写真では、両肺にびまん性に網状影を認め、含気も低下していた。
入院時の胸部単純X線写真 |
NPPVによる治療開始後、呼吸状態が改善したので、食事時のみハイフローセラピーとし、NPPVと併用する方針となった。
その後、日中のハイフローの時間を延長したところ、マスクの圧迫感が強いことなどを理由に「NPPVの装着を今後は希望しない」という申し入れが本人からあった。
ハイフローセラピーを呼吸管理の上限として経過観察。
呼吸不全は緩徐に進行し、ハイフローセラピーのFiO2の設定も上昇傾向ではあるが、呼吸管理に対する苦痛の訴えは少なくなった。
数カ月経過しても、会話も経口摂取もできている。
入院時からの治療経過 ※IPAP:吸気圧、EPAP:呼気圧、FiO2:吸入酸素濃度 |
前職でネーザルハイフローを借りて、
NPPVが上手く行かない患者さんに使ったことあったけど、
しばらく、人工呼吸療法業務から離れている間に、
結構、確立されてたんだねぇ
しかも、診療報酬で加算が付くまでなってたんだねぇ...
浦島太郎状態(汗)
でも、適応が明確でないというのも、残念な気が...
音はウルサイけど、複雑な操作が不要で使いやすくて、
看護師さん方も拒否反応を示さなかったシロモノで、
こちらとしても勧めやすかったっけな...
マスク(鼻カニュラ)やベンチュリマスクでの酸素吸入か、
挿管での人工呼吸器しかなかった時代に比べたら、
呼吸管理の幅が、随分と広がってきた印象
モニタリング機器の併用は欠かせないので、
どうせならIPPVやNPPVなんかとともに、
全てが一体になった装置って作れないものかね?
仕組み的には難しくないような気がするけど、
複雑になりすぎて、作るの大変なのかね?
それともお金がかかりすぎるから?
日本の医工連携の力を見せておくれ(笑)
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