LifeVest.(着用式除細動器)

2012年8月21日火曜日

お仕事 時事ネタ

米国で普及「着る除細動器」
国内でも早期導入を目指す動きが活発に

日経メディカルオンラインより
心臓突然死を防ぐ新しいデバイスとして、着用型除細動器が注目されている。既に米国では有用性が報告され、厚生労働省は今年7月、国内への早期導入を目指す「医療ニーズの高い医療機器」に選定した。

わが国では現在、病院外での心原性の心停止が年間約6万3000件発生している(総務省消防庁「救急蘇生統計、2008年」)。心停止が起こった際に目撃者がいれば、救急搬送して処置したり、自動体外式除細動器(AED)で蘇生できるが、院外心停止例の1カ月後の生存率は10~20%程度にとどまるのが実情だ。

そうした状況の中、突発性心停止のリスクが高い人の心臓突然死を防ぐ策として、着用するタイプの除細動器(wearable cardioverter defibrillator:WCD)が米国を中心に普及している。米国の大手救命救急医療機器メーカーのZOLL Medical Corporation社(ZOLL社、今年4月に旭化成が子会社化)が製造販売する「LifeVest」だ。LifeVestは3つの除細動用電極と4つの心電図用電極が付いたベルト、コントローラーで構成される(図1)。電極を装着するために、患者は伸縮素材のベストを着用する。
図1 ZOLL社が製造販売する「LifeVest」(提供:旭化成)
3つの除細動用電極と4つの心電図用電極が付いたベルトとベストを着用する。コントローラーの重さは635g。
心室頻拍(VT)や心室細動(VF)など、除細動が必要な心電波形を検出すると、警告音とバイブレーションで知らせる。このとき、着用者に意識があれば、解除ボタンを押すことで電気ショックを回避できる。警告音が一定時間鳴っても応答がない場合は、電極内の導電性ジェルが放出され、電気ショックによる除細動が行われる。

LifeVestは01年に米食品医薬品局(FDA)の承認を受けて発売、これまでに米国を中心に約6万人に使われた。厚労省は今年7月の「医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会」で、WCDを対象機器に選定。今後は薬事承認の優先審査の対象となる可能性がある。

ICD適応までの待機にも
米国でWCDの適応となるのは、突発性心停止のリスクがある患者のうち、植え込み型除細動器(ICD)の適応とならない患者やICDを拒否した患者だ。ICDの適応となる疾患でも急性期のため現時点では適応とならない患者や、感染などでICDを抜去した後、再植え込みまで待機している患者などが対象となる。

患者はWCDを貸与され、着用期間分のレンタル料を払う。平均着用期間は2~3カ月。原疾患で最も多かったのは拡張型心筋症をはじめとする非虚血性心筋症で、心筋梗塞後や冠動脈バイパス手術(CABG)後の使用も多い(図2)。
図2 WCD着用患者の原疾患(2012年7月までの累積、旭化成による)
非虚血性心筋症と診断されて数カ月以内での使用が最も多かった。
非虚血性心筋症と心筋梗塞で全体の約70%を占めた。
米国における3569人の使用成績の報告では、59人に計80回のVT/VFが発生し、意識消失例では100%(76/76)、意識があった例を含めると99%(79/80)で正しく電気ショックが与えられた(Chung MK,et al.J Am Coll Cardiol.2010;56:194-203.)。ただし、救急搬送中や病院でVT/VFが再度発生したり、VT/VF以外の不整脈による心停止などもあり、全てのイベント後の生存率は73.6%(78/106)だった。

昨年の米国心臓協会(AHA)の学術集会では、CABGや経皮的冠動脈形成術(PCI)後に左室駆出率(EF)35%以下だった患者にWCDを着用させ、生存率を検討した結果が報告された。3年後までの追跡では、生存率はWCD着用群の方が非着用群より有意に高かった(図3)。
図3 血行再建後のWCD着用の有無による生存率の検討
(Zishiri E,et al.Circulation.2011;124 Suppl 2:A9816.を一部改変)
こうした成績が報告されるようになり、わが国でもWCDの有用性に注目が集まっている。「WCDはICDが使えない患者や、今すぐにICDの適応とはならない患者に使うことができ、ICDでは満たせない患者のニーズを補完する役割を果たす」と東京女子医大循環器内科准教授の庄田守男氏は話す。

日本循環器学会、日本胸部外科学会などがまとめた「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)」によると、心筋梗塞後に1次予防としてICDの適応を検討する場合、急性期には再梗塞などが生じたり、血行再建によって心機能が改善する可能性もあることから、「少なくとも発症後1カ月生存の患者の状況を見て判断すべき」としている。だが、心筋梗塞後の心臓突然死のリスクは、急性期であるほど高い。そこで、「ICDの適応を判断するまでの間にWCDを着用して待機することで、この期間のリスクを低減できる。場合によってはICD植え込みを回避できる症例もあるのではないか」と庄田氏は期待する。

着用コンプライアンスが課題
WCDの問題点としては、誤作動がある。心電波形を体表心電図でモニタリングするため、診断精度がICDに比べて低くなる。患者に意識があればボタン操作で解除できるが、前出のChung氏らの使用成績の報告では、月1.4%の割合で不適切な電気ショックが起きていた。

また、埼玉医大国際医療センター心臓内科教授の松本万夫氏は「今後わが国でWCDを使えるようになった際は、患者への教育も重要になる」と話す。Chung氏らの報告では、WCDの1日平均着用時間は19.9±4.7時間だった。基本的に入浴時以外は着用する必要がある。過去の死亡例では、WCDを着用していなかったり、電極を正しく装着していなかったケースがあった。

今回、厚労省が選定した最新型のWCDは、記録した心電図のデータを無線で転送する機能を持つ。「データを転送すれば医師が着用時間を把握できるようになるので、コンプライアンスの低い患者にも適切な指導ができるだろう」と松本氏は話している。
「LifeVest」って、まだ日本で使えなかったんですね...
ZOILLと言えば今春、旭化成が買収を発表した企業
勢いに乗って日本での認可にこぎつけるつもり...ってところかな?

ICD(植込み型除細動器)の診療報酬上の適応は...
VT/VFにより自然発作1回以上確認され、
ICD以外の治療の有効性が検査で予測できず
有効薬が見つからないまたは薬物療法や
アブレーションを行なってもVT/VFが繰り返される症例
他にはNYHA(ニューヨーク心臓協会)心機能分類
Ⅱ度以上が持続している症例...とあります

LifeVestは実際にVT/VFが発症してなくても、
将来的に予見できる心疾患患者は全て適応になるのかな?
CABGやPCIの術後患者は積極的に使えるようになると良いですね